高校生の政治活動:23教育委員会が「届出不要」を決める

 2016年7月の参議院選挙から適用される18歳選挙権に関連して、高校生の政治活動を学校への許可制・届出制にするかどうかについて毎日新聞社が47都道府県と20政令指定都市の教育委員会に取材調査した結果が、『毎日新聞』2016年5月2日付『高校生の政治活動 23府県・政令市「届け出不要」』に掲載されている。

 18歳選挙権導入に関連して文部科学省は、高校生の政治活動を「解禁」するとした一方、学校の判断で許可制を導入することも否定しないとする通知を2016年1月に出していた。この通知は実質的に規制の継続・強化につながるのではないかという不安や批判の声が出されている。高校生からは「休み時間に政治の話題を話していたら、文科省通知を理由に学校から注意された」といった訴えが出ている。また愛媛県教育委員会では、県立高校・特別支援学校高等部に対して政治活動を届出制にする校則改定のひな型を示し、全高校が届出制にする方向での改定をおこなったことが新聞報道され、また国会質問でも取り上げられた。

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 毎日新聞の取材によりまとまった状況によると、「届け出は必要ない」と回答したのは、15府県と8政令市の計23教育委員会。このほか、「学校の判断に委ねる」としたものの市立高校全校が届け出不要と決めた神戸市・北九州市や、「現時点で不要と考える」とした熊本市の事例もある。

 「学校の判断に委ねる」とした教育委員会でも、「教委としては不要と判断している」(福岡県)、「教委としては一律に判断しないものの、基本的に校外でやることは家庭と本人に任せるべき。届け出制にする必要はないと思う」(埼玉県)、「生徒の政治的信条を問うようなことにならないよう配慮が必要」(京都府)など、届出制導入には慎重な見解が目立っている。

 一方で、「届け出るにしても生徒の政治活動を縛るものではない。学校が生徒の安全を考えての対応だろう」(秋田県)、「政治信条や支持政党を聞くわけではない。生徒が違法・暴力的活動に巻き込まれないよう支援するためで、それ以上の意味はないし、あってはいけない」(青森県)などに、届出制導入に一定の理解を示す教育委員会もある。

 「学校の判断に委ねる」としたものの届け出を義務付けたことが明らかになっているのは、愛媛県の全県立高校と徳島県立53高校中15校。徳島県立高校では他にも5校が、届出制の導入を検討中だという。

 北海道は「文科省の通知の趣旨を踏まえ適切に行うよう指導している」として明確な回答を避け、福岡市・三重県・沖縄県は「検討中」とした。富山県・大阪市は「対応未定」とした。相模原市では市立高校を設置していない。

 政治活動届出制には否定的もしくは慎重な教育委員会が多い一方で、地域によっては届出制導入が実際におこなわれたり、導入の余地が残されている状況が浮き彫りになっている。

 18歳選挙権導入やそれに伴う主権者教育がいわれるもと、高校生が自主的に判断し行動することをしばってはならないといえる。高校生の政治活動については基本的には大人と同様の基準で判断されるべきで、高校生にのみ特別の基準や規制を与えることが正常だとは思えない。

 規制を肯定・容認する理由としては、学業を疎かにしかねないとか、政治活動を装った暴力的な活動に巻き込まれかねないという理由があげられる。もちろんそういう行為は好ましくないし、肯定もしないのは当然であろう。しかしそういうものが仮に発生した場合は個別に対応すべきで、また主権者教育はそういう不適切なものに巻き込まれないように自主的に判断する力の育成も含めてのものではないか。「不適切行為に巻き込まれるおそれがある」ことを口実に高校生の活動全体を規制するようなことは好ましくない。

 文科省通知については、高校生の政治活動への規制の導入・強化につながる恐れがあり、また一部地域では実際に規制へとつながっている。根本的に見直すべきではないか。