文科省:全国学力調査で点数上げることを主目的とした取り組みしないよう求める

 文部科学省は4月28日、同省が毎年4月に全国の小中学校で一斉実施する全国学力調査(全国学力テスト)について、学校側が試験前に過去問・予想問題・類題などを集中的に解かせるなど、点数を上げることを主目的とした取り組みをしないよう求める通知を、都道府県教育委員会に対して出した。

 文科省は調査の目的は学力状況把握としている。その一方で、試験前に過去問題を集中して解かせたり、過去問題集を学校を通じて配付するなど、点数を上げるための取り組みが各地でおこなわれているという情報が寄せられたとして問題視していた。

 一方で文科省は、過去問題の解説や過去問題を解かせること自体は否定していない。

 通知を出しても、現行の学力テストのあり方を根本的に変えないかぎり、同種の問題は手を変え品を変え再発することは容易に予想される。

 元々導入の経緯自体が、地域間・学校間の競争を促す目的だった。世論の批判などもあり、表向きは学力向上把握と言わざるを得なくなった経緯がある。文科省は「競争を防ぐ」として平均点の公表は全国平均と都道府県別平均のみにとどめたが、それでも都道府県別順位が何位とか、全国平均と比べて自県の平均点は上か下かといった話題に矮小化されて取り上げられ、全体的な傾向を冷静に分析する風潮はほとんどなくなっている。一人ひとりの学力状況把握については、成績表が返却されてくるのは半年後、内容は個人点数と解答の正否くらいでほぼ役立たない状態となっている。

 さらに文科省は、市区町村別・学校別の平均点については「文科省としては公表しないが、都道府県や市区町村の教育委員会が自主的に公表することは否定しない」という対応をとり、首長や教育委員会が強引な手法で自治体別・学校別成績を公表しようとするなどの問題も発生している。

 大阪府のように、全国学力テストの結果を高校入試の調査書の評定(いわゆる内申点)に反映させようとする事例もあった。大阪市のように、学校選択制と結びつける形で全国学力テストの学校平均点を公表させた事例もある。

 そのような経過の中で、本来は多面的・多角的な概念である学力を「テストの平均点や順位がすべて」かのように一面的にすり替え、学校平均点を上げることが学校の評価につながるとばかりに扱われ、平均点を上げるための取り組みという一面的な対応が生まれている。

 いわば、点数を上げることを主目的とした取り組みが横行する根本的な原因は全国学力テストのシステムそのものにあり、そのシステムを作ったのは文部科学省自身である。点数を上げる取り組みを文科省が戒める通知を出すこと自体は否定しないものの、根本的な原因に目を向けて改善することなしに通知だけ出しても、責任転嫁にしかならないのではないか。

 現行の方式での全国学力テストはきっぱりと廃止することが、学校・教育委員会の過剰な取り組みをなくす一番の近道ではないか。

(参考)
◎学力調査の過去問対策、行き過ぎに警鐘 文科省(朝日新聞 2016/4/29)