特別支援学校拡充に障害者団体が反対?

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大阪市では市立特別支援学校の拡充・増設が検討されている。それに対して、ある障害者団体が2010年10月8日、拡充に反対する抗議集会を開催したという。

特別支援学校拡充方針

全国的にも知的障害児を対象とした特別支援学校への入学希望者が増加傾向にあり、大阪市でも例外ではない。大阪市では2010年、大阪市立難波特別支援学校(浪速区)の過密化解消のため、難波特別支援学校を現大阪市立栄小学校(浪速区)敷地に移転拡充させる方針を発表した。

現栄小学校は約4万平方メートルの面積を持つ。これは一般的な大阪市立小学校4校強の広さに相当する。その一方で栄小学校では児童数減少傾向となり、2010年時点では1学年1学級となり、空き教室も30教室以上になっている。学校規模と比較して敷地が広すぎることでの栄小学校の施設管理上の不便を解消することや、市有施設の有効活用などを図るため、栄小学校を2013年度にもと浪速青少年会館跡地(浪速区)に移転させた上で、校舎を整備して2014年度に難波特別支援学校を移転させることにした。

また大阪市では、難波特別支援学校の移転のほかにも、知的障害児を対象とした新設特別支援学校を2校ほど増設することもあわせて検討している。

それに対して障害者団体は「インクルーシブ教育の理念に逆行」などとして、地域の普通校での就学を求めて特別支援学校増設に反対しているという。

インクルーシブ教育の理念は、障害を理由に教育の場から排除されることがあってはならないというものである。一方で日本では、インクルーシブ教育の理念を一面的・教条的に誤解し、特別支援学校を「障害者隔離・障害者差別」とみなすかのような流れも一部にある。

「特別支援学校=隔離」ではない

確かに一般的な意味では、特別支援学校が「隔離の場」として機能することはあってはならないことはいうまでもない。

しかし制度上は「隔離」が目的のものではない。

また特別支援学校(当時は養護学校)は、かつて就学猶予などの形で義務教育を受けられなかった障害者について、障害者運動の取り組みによって義務化や学校拡充の流れを作ったという歴史がある。さらに、知的障害児を対象とした特別支援学校への就学希望者が増加しているという現状は、それだけ需要があるということをも示している。

特別支援学校での教育を受けたいと希望する障害者やその関係者の存在、またこれまでの障害者運動の歴史を全否定するかのように、特別支援学校拡充に反対するような一部障害者運動というのは、一体何なのだろうかという疑問を感じる。

一人一人の状況・希望に合った教育を

普通校での就学を希望する人には必要な体制を拡充するということもまた当然であろう。しかしそれは一人一人の状況や希望を無視して機械的に普通学校での受け入れを押しつけたり、特別支援学校を否定する理由にはならない。一人一人の状況や希望などを総合的に判断し、一人一人にあった教育をおこなっていくためには、選択肢を否定することは望ましくない。

個別の状況や希望を無視して普通校へ機械的に放り込むことが自己目的となり、特別支援学校での教育を希望する障害児・関係者の動きを妨害し、また普通校でも必要な体制がとられないという状況のほうが、障害者虐待や障害者差別になってしまうのではないかという疑念を感じる。

特別支援学校の増設と地域の普通校での受け入れは、対立する概念ではない。大阪市は前述障害者団体の申し入れに対して「特別支援学校拡充、普通学級での受け入れ態勢拡充は両方おこなうべき」とする見解を表明しているが、当然であろう。数年前の貝塚養護学校廃校問題の際には「地域の学校で受け入れるべきで廃校の方針は変えない」という見解を固持していたのは今となっては何だったのかという思いもあるが、いずれにしても大阪市の方針が修正されていることは望ましいことである。

「特別支援学校拡充か地域の普通校での受け入れ態勢拡充か」は、どちらか片方しかできないというものではなく、両方ともおこなうべきものであるし両立できるはずである。

特別支援学校と地域の普通校という対立軸を設定する発想から抜け出し、一人一人の児童・生徒にあった教育を作っていくためにはどうすればいいのかという角度から問題をとらえ直さなければならない。

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