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不当配転差し止め求める訴訟:東京の中学校教諭

 東京都杉並区立中学校に勤務する社会科教諭が、区教委に提出する教科書採択に関する調査報告書を作成した際、扶桑社版教科書について事実関係の誤りを指摘した部分について校長から書き直しを命じられた問題が、2005年度に発生しました。該当教諭が2006年度から不当配転を内示されたとして、処分差し止めを求める訴訟を起こしたということです。

教科書問題での「転任は不当」と提訴〔『日刊スポーツ』2006/3/20〕

 東京都教育委員会の転任処分は不当として、杉並区立宮前中学校の片山政志教諭(57)が20日、都の処分差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こした。転任は4月1日付のため、3月中に結論を求める仮処分も申し立てた。

 訴状などによると、杉並区教職員組合に所属する片山教諭は昨年6月、06年度用の教科書調査報告で歴史など3科目を担当し、扶桑社発行の教科書について事実関係の誤りを指摘する報告書を提出した。

 「誤り」とした部分を「疑問」と書き換えるよう校長から言われて応じたが、別の中学でも書き換え指示が判明したことなどから、7月末に事実関係を記者会見で公表。今年1月、守秘義務違反として区教委の事情聴取を受けた。

 片山教諭は宮前中に残ることを希望していたが、今月初め、校長から大田区の中学校への異動を内示されたという。

 杉並区は昨年8月、中学歴史教科書として扶桑社発行の教科書使用を決めている。

 この間の経過を見ると、この教諭への異動内示は通常の人事異動とはいえず、教科書問題を理由にした報復人事・不当配転の疑いが極めて濃いと指摘すべきだといえます。

 明らかに事実関係を誤っている内容や一方的な見解を押しつけるような内容と受け取れる扶桑社版の社会科教科書について、事実関係の誤りを指摘したのは、学問的な立場からも、また教育的な立場からも、社会科教員としての良心に属するものだといえます。

 現場の教員の意見をゆがめてまで、何が何でも扶桑社教科書を押しつけたいと策動した、2005年度の杉並区教委の乱暴な採択策動は反民主主義的なものであり、採択のルールを無視したものだと指摘せざるを得ません。

 『日刊スポーツ』の記事では「誤り」とした部分を「疑問」と書き換えるよう校長から言われて応じたという無難な表現になっています。しかし実際には、「校長から書き換えるように強要され、やむなく応じざるを得なかった」と表現した方がより実態に即しています。

 また、書き換え強要に関する事実関係を公表したことに対して杉並区教委が「守秘義務違反」などとしたことは、あえてきつい表現をとると「言いがかり」といってもいいような内容です。教育委員会の不正行為を内部告発することは公益に即する行為で、一般的な「守秘義務」の問題とは性質を異にするものです。

 人事権を持つ都教委も、都立中高一貫校で扶桑社教科書を採択するなどし、扶桑社教科書に好意的な教育委員会とみられています。東京都と杉並区の思惑が一致して、この教諭への異動を強行しようとした可能性が高いと見なさざるを得ないでしょう。

 不当配転とみられる人事異動は撤回されるべきで、またこの問題の早期解決を願っています。