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大阪市「家庭教育条例案」、提出見送りへ

 「大阪維新の会」大阪市議団が5月議会に提案すると報じられた「家庭教育支援条例案」。条例案が報道され、また入手した弁護士がインターネット上に条文をアップしたことなどで、内容への批判が高まり、5月7日には「白紙撤回」と報じられた。

 この条例案では、「伝統的子育て」と称した家庭教育への介入や保護者への「自己責任」を強いる問題に加え、発達障害を「早期予防・防止」としていることや、児童虐待と発達障害の問題を混同して論じているなど、科学的に全く誤った内容が盛り込まれていたことも、批判に輪をかけた。
 橋下徹大阪市長をはじめ維新市議団の関係者は沈静化に追われる羽目になった。橋下氏は、直前に発覚した飯田哲史大阪市議の政務調査費不正問題とこの問題の2件をあわせて火消しをはかったのか、ツイッターでは内申書問題に話をそらせて大量のツイートをしている。
 また、維新条例案の背景には、高橋史朗・明星大学教授など極右派が提唱する「親学」なるものがあることが指摘されている。高橋氏は2010年4月、産経新聞に「発達障害は早期発見と早期治療で治る」と主張するような論考を掲載している。
 この間の事実経過は、新聞記事などを総合するとおおむね以下のようになっている。

◆4月下旬:今回の条例案の中心となった辻淳子大阪市議が、「親学」を提唱する高橋史朗・明星大教授から資料提供を受ける。(朝日5/7)
◆5月1日:資料を維新の議員団会議で提示。毎日新聞では「市議団が公表」と表現。(朝日5/7,毎日5/7)
◆5月1日:一部マスコミが「維新が『家庭教育支援条例案』を検討している」と報じる。当初は「保護者に保育士の一日体験義務づけ」など断片的な報道。
◆5月1日夜~:条例案に「発達障害の予防・防止」の記述があることに気付いた人から、ネット上で批判が起きる。自由法曹団の大前治弁護士が条例案を入手し、ネット上で公開。条例案への批判が強まる。
◆5月3日:橋下徹大阪市長、ツイッター上で「発達障がいの主因を親の愛情欠如と据えるのは科学的ではない」「僕の考えを市議団長に伝えた」などと釈明。一方で、「市議団は独立権限をもつ」と自らの「維新」代表としての責任を棚上げする発言も。
◆5月4日夜:「家庭教育条例案」について「橋下市長、火消しに躍起」(共同通信)と報じられる。このころから各紙とも報道が増える。
◆5月6日:しんぶん赤旗、「大阪市 維新が「家庭教育条例案」 特異な子育て思想押しつけ」と報じる。発達障害を「予防・防止」とする背景に高橋氏が提唱する「親学」の考え方があることを指摘。
◆5月6日:維新が関係議員を集めて会合。ウェブサイトで「巷に出回っている家庭教育支援条例案について」なる声明を発表し、ネットで出回っている条例案は偽物ではなく維新の資料であること自体は認めたものの、条例案ではなく「たたき台のたたき台」としての資料で、議員団としての決定ではないと弁明。
◆5月7日:発達障害の子どもを持つ保護者らの13団体、維新市議団に提案見送りを要望。維新市議団、提案の見送りを決める。

 維新側は苦しい弁明に必死であるが、そもそもこういう条例案を平気で出すこと自体、教育や子育てへの無理解を示している。彼らにとっては予想外の世論だったのかもしれないが、批判が強まると「たたき台としての資料」は通じないのではないか。この条例案では発達障害の部分がクローズアップされたが、ほかの部分でもかなりの問題があるものである。
 大阪維新の会は教育や子育ての問題について理解が薄く、その背景には極右勢力による「親学」思想がある、このことはおさえておかなければならない。「親学」推進勢力と手を組んでいる限り、こういう条例案がもっと表現を工夫した形で再検討・提案されることもありえる。今後このような条例案を出させないような世論を作っていくことが重要ではないか。
 また大阪市という一地域だけの話にとどまらない。国政でも、「親学」の思想に基づいて家庭教育に関する法律を作ろうとする勢力がいる。国会には「親学推進議連」なるものができ、安倍晋三・鳩山由紀夫の両元首相や山口那津男公明党代表などが参加している。大阪市の問題だけでなく、国政についても注意しておかなければならない。