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扶桑社教科書採択は違憲・違法:市民が提訴 栃木・大田原

 栃木県大田原市教育委員会は2005年7月、中学校社会科(歴史的分野・公民的分野)の教科書に、「新しい歴史教科書をつくる会」が中心となって編集した扶桑社版教科書を採択しました。そのことに対して市民らが「採択は違憲・違法」などとして採択取り消しなどを求める訴訟を起こしました。

■ 「教科書採択は違法」と提訴 大田原市民ら94人〔『下野新聞』2006/8/29〕
 大田原市教委が昨年、中学校の歴史と公民の教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」主導の扶桑社版を採択したことに関連し、大田原市民や韓国人ら九十四人が同市や市教委、県教委などに損害賠償を求める民事訴訟を二十八日、宇都宮地裁に起こした。賠償額は原告一人につき千円で計九万四千円。
 訴状によると、原告側は(1)同市への編入合併に伴い、別の教科書を採択した旧黒羽町、旧湯津上村が扶桑社版を強制させられた(2)特定のイデオロギーを公教育に持ち込むことであり、違憲・違法性がある(3)記述内容に間違いがある-などと主張。
 違憲および違法の確認や採択取り消し、韓国の日刊紙への謝罪広告掲載などを求めている。原告側は同日、県庁記者クラブで記者会見し、代理人が「違法行為を重ねた上で採択されているため、認められない」と訴えた。

 扶桑社教科書については、一般の教科書とは全く異なる重要な問題点があり、教科書として認可されたこと自体が問題だといえます。扶桑社教科書の内容に含まれる「重要な問題点」とは、以下のようなものがあります。

  • 事実に反する内容や、一方的な解釈や独自の解釈(学問的には相手にされていなかったり、少数学説に過ぎない主張)をあたかも絶対的な真理・学問上の定説かのように扱っている内容など、不適切な記述が多くある。
  • 民主主義否定・人権軽視・戦争賛美などの重大な問題をはらんだ記述が多くみられる。

 教科書に求められる条件としては「各教科の内容の基礎となる、学問の研究結果を反映したものである」「教育学や心理学などの子どもに関する科学の研究成果を反映し、内容が子どもの発達段階にあった、子どもが適切に理解できるレベルのもの」「特定の立場や特定の結論を押しつけるのではなく、子ども自身が内容を自ら考えられるよう工夫した構成」といったものがあります。しかし扶桑社版歴史・公民教科書は、学問の研究結果を無視・軽視している上、特定の政治的立場を子どもに一方的に押しつけようとする代物だといえます。「政治的プロパガンダ文書」に近い性質を、扶桑社教科書は持っているといえます。
 すなわち、原告側の主張「(2)特定のイデオロギーを公教育に持ち込むことであり、違憲・違法性がある(3)記述内容に間違いがある」については、全くその通りだといえます。
 同様の訴訟は、愛媛県や東京都杉並区など、扶桑社版教科書を採択された地域で提起されています。これらの地域での訴訟とあわせて、大田原市の訴訟でも裁判の展開を注目していきたいと考えています。