育鵬社教科書グループが教科書採択結果へのコメント発表

 育鵬社教科書執筆グループの母体となっている「教科書改善の会」および「日本教育再生機構」は9月7日、「平成27年の中学校教科書の採択結果に関するコメント」とする文書を連名で発表した。

 彼らの計算によると、教科書の全国シェアは歴史約7万2000冊(生徒比約6.2%)、公民約6万5000冊(同約5.6%)となっている。前回採択時より増加することは確実で、彼らは「当方では、幅広い支持をいただいた躍進と判断できると考えております」としている。

 その上でコメントでは、以下のような言及をおこなっている。

今回採択いただいた教育委員の意見を見ても(後掲)、目立つのは、育鵬社は、歴史や伝統について学びやすく、日本国への愛情を育てる教科書であり、しかも、グローバル社会に生きる日本人の意識の育成に最もふさわしい教科書であるとして高く評価されたことです。
こうした、時代変化に対応した教育基本法および学習指導要領の趣旨に最も沿った教科書が、育鵬社であるという認識が、確実に広がった結果であろうと考えられます。

 もっとも、採択を決めた自治体では、首長や教育委員が「日本教育再生機構」の役員やその同調者で、特定教科書の関係者であるにもかかわらず教科書採択に関与した教育委員がいたり、首長が間接的に影響を与えていると思われる事例も目立っている事実には触れていない。

 県立中高一貫校での新規採択を決めた千葉県では、森田健作知事・野口芳宏教育委員がそれぞれ「日本教育再生機構」の代表委員となっている。また今回新規採択となった石川県加賀市でも、宮元陸市長は「日本教育再生機構」の代表委員でもある。また山口県防府市の松浦正人市長は、育鵬社教科書を支持する立場でもある安倍内閣の教育「改革」に同調する「教育再生首長会議」の会長であり、防府市でも育鵬社が新規採択されている。

 またコメントでは、「今年4月に始まった新しい教育委員会制度や、文部科学省による採択制度に関する法令や制度の改善が、今回の採択に十分活かされたのかどうかについては疑問が残ります」と言及し、教科書採択制度のさらなる「法令改正や制度改善」を求めている。育鵬社教科書と同調する安倍内閣を通じて、育鵬社教科書勢力にとって都合がいいようにシステムそのものを変えたものの、十分ではない、もっと改悪しなければという宣言で、警戒を要すべきものであろう。

 コメントでは、「育鵬社を名指しで批判する不当な採択妨害」があったとして非難している様子もみられる。しかし前述のように、「日本教育再生機構」に関係する人物が教科書採択に関与している事例も目立っている事実がある。

 また育鵬社支持者の側が、常軌を逸した方法で採択運動をおこなった事実もある。「フジ住宅」(大阪府岸和田市)でのヘイトスピーチ・パワハラ事件の一環として、「日本教育再生機構」の役員でもある同社会長の名前で、教育委員会に対して育鵬社採択を求める要望文を書くよう従業員に呼びかけた事件が明らかになっている。大阪府東大阪市では「育鵬社・自由社教科書採択を求める」を口実にしたヘイト街頭宣伝が連日繰り返された。

 ヘイトスピーチ勢力が育鵬社教科書採択運動に関与していることも含めて、育鵬社教科書支持者がなりふり構わない行為をおこなった事実こそが、静謐な採択環境を政治主導で妨害する行為であり、問題だといえる。

 コメントからは、育鵬社教科書支持勢力が今後重点を置いてくるであろう点について示しているような印象も受ける。彼らの出方も研究しながらも、学問的研究によって導かれた事実や子どもの実情に立脚した立場での教科書を子どもたちに渡す方策を検討したい。

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