2020年教科書採択、中学校社会科歴史教科書の雑感

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2020年夏におこなわれた中学校社会科教科書採択。2021年度版の社会科歴史的分野も注目点の一つとなった。

文部科学省が2020年11月18日に発表した各社別のシェアは、歴史教科書では東京書籍(60万6365冊、52.5%)・帝国書院(29万663冊、25.2%)・教育出版(13万1657冊、11.4%)の順となり、発行元7社のうち3社あわせて9割近くを占めた形になった。

教科書の特徴について、2020年夏の教科書展示会や採択会議での議論を元に、気づいたことをメモ。

育鵬社

かねてから批判があった育鵬社。2021年度版でも、従来版の不適切な構成を継承している。

史実の扱いが雑というか、歴史学研究の成果反映よりも政治的イデオロギー優先というか、不正確な箇所が目立つ。

「大東亜戦争(太平洋戦争)」と表記するなどの特異な記述。沖縄戦の「集団自決」は「追い込まれた人もいる」など曖昧な記述。

日本国憲法の制定過程については、「GHQが押しつけたものをほぼそのまま通した」かのような、史実とはいえない記述。

これでは歴史認識も正確なものを得られないし、高校受験や高校以降での学習にも支障が出る。

内容のひどさも問題だが、2011年の八重山教科書問題や2015年の大阪市での教科書採択で不正があった問題など、過去に育鵬社教科書採択を支持する人たちからの強引な行為が繰り返されてきた。

2020年教科書採択では全国で「育鵬社離れ」が進み、採択冊数・採択率ともに大きく激減した。

学び舎

2015年に続いて2度目の歴史教科書発行。細部にまで目を配ったていねいな記述をおこなっている。史実のていねいな記述だけでなく、生徒の興味関心を呼び起こそうとする工夫が随所になされている。

記述内容をみれば、際だって「よい」と感じる。

産経新聞などは、”自虐色が強いともされる”などと、極右的な立場から難癖を付けていた様子。

あえて難点をあげるなら、イデオロギー的な問題ではなく、内容はよいものながらもボリュームがあり、学力に幅がある一般の公立中学校では、教員の側の力量が問われることにもなるかもしれない。

「(内容が充実しているという意味での)使いやすさ」が「(結果的にハイレベルになっているような形での)使いづらさ」にも変わりうるジレンマ。気になっていたが、公立採択地区での採択はなく、一部の私立校で採択された様子。

山川出版社

高校日本史・世界史の教科書では定番の出版社、中学校歴史教科書に初参入。

高校の日本史・世界史教科書としては最も多く採択・使用されている『詳説日本史』『詳説世界史』への接続を考慮しているとうたっている。記述やデザイン・資料などの構成は高校教科書の構成に合わせている。

よく言えば「記述がまとまっている」、批判的にいえば「記述が無味乾燥だと評する人もいる」といった、高校教科書の特徴を踏まえて中学生向けに書き換えたような形となっている。

産経新聞あたりは、”久々に「従軍慰安婦」の呼称を復活させた”などと難癖を付けていた様子。「極右的」な立場から目の敵にされた一方で、同社教科書には、沖縄戦の「集団自決」の記述がなかったという指摘があった。

中学生向けだとはいえども、難易度が高いと受け取られるかもしれない。教科書採択の審議の際には「難易度が高い」と受け取られて敬遠する向きも生まれた様子。採択は中高一貫校など一部にとどまった。

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