「教育無償化のために改憲」の危険な論理

 安倍晋三首相が自民党の保岡興治憲法改正推進本部長と2016年10月に会談した際、「教育無償化」を改憲の争点として例示し、その後自民党の改憲方針にも取り入れられていたことがわかった。

 毎日新聞2017年1月11日付『改憲項目 「教育無償化」も…安倍首相が例示 自・維が協議開始へ』が報じている。

 「教育無償化のために改憲」は、おおさか維新の会(現・日本維新の会)も打ち出し、2016年夏の参議院選挙でも掲げていた。安倍首相もその論理を取り入れた形になる。

おおさか維新の憲法改定案:「教育費無償化」打ち出すが実際には危険
 おおさか維新の会は2016年3月、「教育費無償化」などを掲げる憲法改定案を発表した。教育費無償化は現行憲法を変更する必要なく立法次第で実施...

 しかし、教育無償化については、憲法の条文をいじらずとも対応できるものである。

 日本国憲法26条「法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」などを具体化するための措置として、国や地方自治体が教育無償化措置も含めて必要な措置をとることは、禁止も否定もされていない。実際に、高校授業料無償化の実現や、大学等高等教育における給付制奨学金制度を導入する見通しが立ったことなど、憲法を改正しないままに実現したり、実現の見通しとなっているものである。

 「教育無償化のために改憲」は、そもそも必要のないことである。その一方で、自民党や維新が掲げる改憲の方向性は、基本的人権の問題・平和主義・統治機構などいずれをとっても、現行憲法の中身を大きく変質させ、国家主義的だったり基本的人権を制限するような中身になっていることが指摘されている。

 それらの問題点をごまかすために、改憲にあたって「教育費無償化」を出してきたのであろう。教育無償化そのものを否定する人はほとんどいないと考えられるが、現行憲法の枠組みでできることにもかかわらず「改憲しないとできない」とミスリードを誘うことで、基本的人権の制限などの問題点がある改憲案への支持風潮を作り出そうとしているのではないかと考えられる。

 また、「教育費無償化のために改憲」とは、逆に言うと「現行憲法のもとでは、教育費無償化を含めた教育費負担軽減の措置は取らない・取る気はない」といっているようにも受け取れる。

 いずれにしても「教育費無償化のために改憲」の論理は、問題といえるのではないか。

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