川崎市、教科書採択地区の全市1区への統合を申請

 川崎市教育委員会が教科書の採択地区について、現行の市内4採択地区から全市1区に統合することを目指し、神奈川県教委に申請をおこなっているとのこと。2017年度の実施を目指し、2016年秋以降の神奈川県教育委員会会議で検討される見通しになっているという。

 公立小中学校での教科書の採択地区については、市・郡ごとの採択、もしくは地理的文化的につながりが強い近隣の市・郡をまとめて採択地区を設定することになっている。政令指定都市については、各行政区ごとに採択地区を設定することや、またはいくつかの行政区をブロック化して採択地区にすることもできる。

 採択地区の設定・変更については、関連の市町村教育委員会からの希望申請を受けて、都道府県教育委員会で検討して決定することになっている。一方で近年では、採択地区が統合・拡大される事例も目立っている。

 政令指定都市については、近年では2010年に横浜市で、また2014年に大阪市でそれぞれ、全市1区への採択地区統合がおこなわれた。従来は、横浜市では18行政区各区ごとに18採択地区を設定し、また大阪市では市内24行政区を8ブロックに分けた8採択地区(1採択地区あたり2~4行政区)で、教科書採択を実施していた。

 採択地区の統合・拡大の背景には、推進派によると、市内で教科書を統一することで、「教材研究や授業実践などの情報交換をしやすくする」「市内での学年途中の転校の際には、教科書が同じになることで授業進度などがほぼ同じになり、子どもたちの負担が少ない」などを表向きの理由にしている。

 しかし実際には、教育内容が画一化されて教師の授業研究・教材研究の意欲が落ちたり、また転校うんぬんについても「市外への転校なら意味がない」と指摘されるなどしている。採択地区統合化の実際の目的については、教科書採択に学校現場や住民の声を通りにくくさせることで、育鵬社など極右派教科書の採択をしやすくするねらいがあるとみられている。

 2009年に一部の行政区で自由社を採択した横浜市では、採択地区統合後の2011年教科書採択以降は育鵬社を採択している。また大阪市でも、採択地区統合後の2015年に育鵬社を採択した。いずれの市でも、教科書採択にあたって、教育委員の対応に疑問がもたれたり、また大阪市では不正疑惑まで浮上している。

 育鵬社の教科書は中身そのものも異常ではあるが、それ以前の話として、教育現場の意向とは大きくかけ離れているような、教育委員やその周辺の一方的な意向を強引に押し付ける状況が蔓延している形になっている。

 横浜市や大阪市での騒動をみると、川崎市でも似たようなことがねらわれているのではないかということは、十分に想像がつく。「川崎の1地区化は、かつて横浜に提出された右派の請願と同様の趣旨の請願を採択したことをきっかけにしており、育鵬社採択に有利な条件作りが狙いと思われます」という指摘もある。

 教科書採択地区の統合は、不要だといえる。

(参考)
◎子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会「川崎の教科書採択地区統合に反対の声を」(2016年8月20日)

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