「歴史総合」科目:極右派が内容ゆがめることねらう?

 文部科学省の審議会は、次期学習指導要領の審議まとめ案を出した。そのうち、2022年度新入生より学年進行で実施される計画となっている高等学校学習指導要領では、地理歴史科に新科目「歴史総合」を新設し必修とするという方針が示された。

 「歴史総合」は従来の日本史と世界史の二本立てだった歴史教育を見直し、日本と世界の状況を結びつけて学ぶ目的となっている。そのこと自体は歓迎されるべき内容ではあるが、一方で「歴史総合」科目に対して良からぬ意図を求める勢力もある様子。

 『産経新聞』2016年8月11日付が『次期学習指導要領で導入される「歴史総合」は自虐史観の呪縛を解けるのか…』という記事を出した。「歴史総合」によって、極右派がいうところのいわゆる「自虐史観」を排して、学問的にも特異な意図や観点に基づいた極右的な歴史観を育成することを狙っている意図が浮き彫りになる。

 現行学習指導要領での高校世界史必修化により、極右的・国家主義的な発想を元にする立場から、日本史必修を求める動きも生まれた。「歴史総合」科目の新設は、そういった極右勢力にとっても、日本史必修の発想の延長として利用を図ろうとするものとなっている。

 その一方で、日本史を学ぶとか、世界と日本の歴史を融合させて学ぶ総合科目の設置など、そういったこと自体は、極右派との意図とは無関係に検討されるべき課題だったといえる。歴史を知る、社会を理解するという意味では、幅広い知識と理解を得ておいたほうがいいことはいうまでもない。

 科目設置そのものが問題ではなく、一部の極右的な政治的意図によって設置科目の内容を変な方向にゆがめようとする動きが問題だといえる。

 極右勢力は、新学習指導要領で打ちだされた、生徒自らが能動的に授業に参加し対話を通じて深い学びを習得する「アクティブ・ラーニング」概念を悪用し、トンデモ説を有力説と同じような扱いにしながら、トンデモをあたかも史実のように誘導しようとしていると思われる。記事では具体例として南京事件(1937年)を題材にあげながら、新設の「歴史総合」科目は「知識の補強だけでなく、その見方についても自虐史観の呪縛を解く可能性を秘めている」とまとめている。

 現在の育鵬社・日本教育再生機構勢力が分裂する前の「つくる会」が1990年代から2000年代にかけて、「ディベート」授業実践を一面的に強調し、学問的に定説と考えられているものとトンデモ説について、あたかも有力説の並立かのように対置して生徒に討論させることで、結果的にトンデモを広める作用を狙っていたことを思い出す。

 「アクティブ・ラーニング」概念自体は、適切に実践されれば教育効果を得られると考えられる。しかし政治的主張の押し付けによるゆがめられた方向への誘導へは、警戒する必要がある。

 1980年代の「現代社会」科目設置の際にも極右的な押し付けの意図があるとみられて警戒されたが、現場の教員の教育実践によって打ち破っている。今回の「歴史総合」科目についても、極右派による押し付けの意図はあるとはいえども、現場の教員の教育実践が深まることで極右派の狙いを打ち破るような形にすることが望ましい。

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